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【携帯用デジタルマルチメータ
:温度によって精度が変わるって本当?】

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校正のトピックスNo.35
【携帯用デジタルマルチメータ
:温度によって精度が変わるって本当?】

NKS流「ためしてガッテン!」

保管場所・使用場所の温度によって測定値が変わる?

  • 前回は、試験室などで使われている高精度(読み取り値7桁1/2)のデジタルマルチメータのウォーミング時間を取り上げましたが、今回は、いろいろなフィールド現場で使用されている携帯用(読み取り値4桁1/2)デジタルマルチメータを取り上げます。
  • 上記の携帯用デジタルマルチメータの取扱い説明書には、ウォーミング時間の注意書きはありませんが、使用できる温湿度、保管場所の温湿度の記載があります。
  • 例:使用温度範囲 -10~50℃(湿度80%RH以下)但し、結露が無い事
      保存温度範囲 -25~60℃(湿度70%RH以下)但し、結露が無い事
  • また、使用できる温湿度であっても、温度によって精度が変わる記載があります。(精度に対する温度係数)
  • 例:温度係数 -10~18℃及び28~50℃の範囲では精度×0.05/℃を加算
    これは、23±5℃の範囲から温度が1℃外れる毎に、精度が0.05%ラフになる。
  • 今回、テーマに取り上げた携帯用デジタルマルチメータのメーカ精度(DC5Vレンジ)を元に、使用環境の温度に対する各精度は、(メーカ取扱い説明書の精度と温度係数を計算すると)
    ◎温度0℃のときの精度  :±(0.048%読み値+5digit)
    ◎温度25℃のときの精度 :±(0.025%読み値+5digit)
    ◎温度50℃のときの精度 :±(0.053%読み値+5digit)
    となります。
  • そこで、使用温度によって精度が違ってくると記載されている携帯用デジタルマルチメータを、温度が違う場所で入力電圧を測ったとき、測定値にどう影響するのだろうか。(実験:1)
  • また、常温で保管されたデジタルマルチメータを、温度が違う場所に移したとき、時間の経過とともに測定値がどう変わるのか(実験:2)を測定しました。

環境温度によって、測定値がどうなるのか
        を実験しました

  • 【実験に使用した標準器】
    1)電圧発生器:5500A  フルーク社製
     (出力電圧の変動幅は、設定電圧の±0.005%以内で、デジタルマルチメータ
      への影響は無視できる状態)
    2)携帯用デジタルマルチメータ:73402  4桁1/2  横河M/C社製 
      精度:18~28℃の温度範囲内
     ・・・DC5Vレンジ:±(0.025%読み値+5digit)
      温度係数:精度×0.05/℃を加算(ー10~18℃および28~50℃の範囲)
  • [実験:1]
    デジタルマルチメータを0℃、25℃、50℃の温度で1時間慣らした後、入力電圧DC0VとDC1Vをかけたとき、各環境温度による測定値の違いを実験しました。
  • [実験:2]
    25℃で1時間以上、温度慣らししたデジタルマルチメータを、0℃、50℃の環境に移し、入力電圧DC0VとDC1Vをかけたとき、時間に対する読み値の変化を実験しました。
  • 実験1・実験2で使用した測定器
    電圧発生器:5500A フルーク社製
    基準値測定用デジタルマルチメータ:2010 ケースレイ社製
    被測定器:73402 横河M/C社製
  • me-ta2.GIF me-ta3.GIF me-ta4.GIF me-ta5.GIF me-ta6.GIF me-ta7.GIF

実験結果から

  • 【実験1の結果から】
    1)携帯用デジタルマルチメータを、温度が25℃の場所で1時間以上慣らした
     後の測定値は、電圧入力0V、1Vともに誤差なゼロでした。
    2)温度0℃で慣らしたとき、電圧入力0Vでは、誤差ゼロ。
     1Vでは、+0.0005Vと高い値でした。
    3)温度50℃で慣らしたとき、電圧入力0Vでは、-0.0001V 低く、
     1Vでは、+0.0004Vと高い値になりました。
    4)尚、上記2)3)の温度でズレた測定値は、最大0.0005Vで、各温度の
     メーカ精度の範囲に収まる値でした。
     (メーカ精度を電圧値に換算すると、0℃:±0.0010V
       25℃:±0.0008V  50℃:±0.0010V)
  • 【実験2の結果から】
    5)携帯用デジタルマルチメータを、温度25℃の場所で1時間以上温度を慣ら
     した後、0℃と50℃の場所に移したときの測定値の変化は、電圧入力
     0V、1Vともに誤差はゼロでした。
    6)温度0℃の場所に移したときは、電圧入力0Vでは変化がなかったが、1V
     では時間の経過とともに測定値が高くなり、約55分後に 1.0005Vになり
     ました。
    7)温度50℃の場所に移したときは、電圧入力0Vでは、同じく変化がなかった
     が、1Vでは、0℃の場合と同様、徐々に高くなり、約40分後には、
     1.0004Vの値になりました。
    8)一般的な温度(23℃±5℃)から、低い温度、或いは高い温度のところに
     移したとき、いずれも測定値は変化するが、各温度のメーカ精度の範囲に
     十分収まりました。ただし、変化する度合は、時間的に一定ではありません
     でした。

携帯用デジタルマルチメータは、
       使用する環境温度によって指示がズレる

  • 携帯用デジタルマルチメータは、その用途として、様々な温度環境で使われますが、今回の実験から、一般的な温度環境(18℃~28℃)では、ウォーミングアップをしなくても、直ぐに正確に(メーカ精度で)測ることができます。
  • また、環境温度が0℃や50℃など厳しい状況下では、デジタルマルチメータの測定値が変わること。またその変化は、環境温度が変わったとき、時間の経過とともに徐々に変化しますが、精度範囲内のズレに収まることが確認でき、安心して使えることが分かりました。
  • メーカの取扱い説明書には、必ず上記の一般的な環境での精度と、環境温度の変化に対する精度への影響度合(温度係数:一般的な環境温度から1℃当たり外れたときの精度に加算する係数)が記載されています。
  • 携帯用デジタルマルチメータは、使用場所の温度によって精度が変わります。従って、事前にメーカの取扱い説明書で、温度による精度を確認してから、フィールド現場で測定される事をお勧めします。

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