”ある程度”って”どの程度”?

- ●装置の温度制御や測定のため、工場では様々な設備に温度センサが使用されています。
- ●装置内の温度を測る温度センサは、一般的に”ある程度”の長さを熱源に挿入しないと正しい測定ができないといわれます。
- ●これは、熱伝導で測定対象の熱が外部に伝わる(又は外部の熱が内部に伝わる)ためです。
- ●熱源に一定の長さを入れないと正しく測れないかな?というのはイメージしていただけるかと思いますが、その”ある程度”は人によって違っていそうです。
- ●そこで、今回は実際に温度センサを熱源に挿入する長さを変え、どの程度が”ある程度”といえるのか?実験してみました。
影響は意外と大きい?小さい?

□対象温度センサ
タイプ:測温抵抗体(Pt100Ω)
径3.2mm、長さ200mm
□使用した標準温度計
高精度Ptデジタル温度計
(TestoGmbH社製)
標準温度計のセンサは出来るだけ恒温槽に浸るよう、斜めに挿入する。
□測定内容
対象温度センサの挿入長さ:1/2/3/5/10/15cm
恒温槽(液槽)設定温度:121℃
室温環境で実施(25℃前後)
■測定結果


- ●校正作業目線でみると、120℃前後で3℃以上もの差異は、あまりに大きい。
- ●一方、僅か1cm浸漬しただけで120℃付近の測定値で、思ったより差異が少ない、と思う人もいます。
- ●この”差異の大きさ”に対する感想、これも人の感覚ですね。
※上記の実験結果は、あくまで一例で、種々の条件により計測値は異なります。
妥当な測定のためには明確に示すことがポイント

- ●温度センサの最小挿入長は一般的に”センサ外径に対して15~25倍程度必要”とされています。
- ●今回の実験では『5cm以上』で「温度センサの値」と「標準温度計」との温度差がゼロになりました。
- ●長さ(50mm)と、外径(φ3.2)との比率は 約15倍 となります。
- ●測定対象の媒体(液体/気体)、静止/流動、内部と外部の温度差、管径などにより影響度合いが異なります。そのため一概には言えないものの、最小挿入長が外径の『15~25倍』というのは一つの目安になるのではないでしょうか。
- ●ところで、実際の作業のとき”ある程度”の挿入長とか、”差異が大きければ〇〇する”など、作業者の感覚に委ねた進め方をすると、再現性や結果のバラつきに繋がりかねません。
- ●当社では作業手順書に、最小挿入長を『管径の〇倍+50mm、最小〇mm』のように示し、作業者の感覚のみに頼らない測定といえるようにしています。