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2010.03.03

校正のトピックスNo.37
【温度指示計:周囲温度によって温度指示値が変わる?】

NKS流「ためしてガッテン!」

温度による誤差=周囲温度+基準接点補償誤差

    • 前回は、温度指示計の誤差の要因の一つとして、ウォーミング時間を取り上げました。
    • 今回は、温度指示計の誤差の要因となる、基準接点補償誤差と周囲温度による影響を取り上げます。
    • 熱電式温度計は、温度を正しく表示するため、温度測定回路の基準接点(入力端子)の温度を補正する方法として、
      (1)基準接点(入力端子)の温度を温度計に内蔵された回路で補正する内部
      温度補償式と
      (2)基準接点を氷点式基準接点補償器で0℃に保って補正する外部温度補償式が
      あります。

  • 一般的な熱電式温度計に使われている内部温度補償回路の働きが、周囲温度の変化によって温度計の指示値にどれだけ影響するかを実験しました。

温度計の周囲温度を変え、温度指示値の変化を実験しました

    • 【実験に使用した標準器及び測定器】
      (1)電圧発生器:CA150 横河電機社製
      (2)実験に用いた被測定器:
      ◎温度指示調節計:UT450  入力レンジ:K熱電対-270.0~1370。0℃
      測定環境:23℃±2℃ 55±10%RH(説明書に記載) 横河電機社製
      1)測定精度:±(計器レンジの0.1%±1digit)
      2)基準接点補償誤差:±1.0℃(15~35℃)
      ±15℃(0~15℃、35~50℃)
      3)周囲温度の影響:±1μV/℃ 又は ±0.01% of FS/℃
      何れか大きい方
    • [実験]
      (1)初めに、周囲温度25℃の環境で、温度計を1時間以上のウォーミングアップを
      とり、今回の実験にウォーミング時間による影響がないようにしました。
      (2)周囲温度を25℃から、15℃、5℃ と-10℃ずつ下げて、1時間以上の温度
      慣らしした後、各周囲温度での 0℃、500℃、1000℃ の温度指示値の変化
      を測定しました。
      (3)同様に、35℃、45℃ と+10℃ずつ上げた場合の各周囲温度での 0℃、
      500℃、1000℃ の温度指示値の変化を測定しました。

 

周囲温度を変えた時の温度指示値の変化は?

  • 【実験結果から】
    (1)温度計(UT450)を、恒温槽に入れて周囲温度を変えていった時、
    入力0℃の場合の温度指示値は、
    周囲温度を25℃、15℃、5℃ と10℃ずつ下げた場合は、-0.1℃ずつ下がり、
    周囲温度を25℃、35℃、45℃ と10℃ずつ上げた場合は、+0.1℃ずつ上がり
    ました。
    (2)500℃の場合の温度指示値は、
    周囲温度を25℃、15℃、5℃ と10℃ずつ下げた場合は、-0.2℃ずつ下がり、
    周囲温度を25℃、35℃、45℃と10℃ずつ上げた場合は、+0.2℃ずつ上がり
    ました。
    (3)1000℃の場合の温度指示値は、
    周囲温度を25℃、15℃、5℃ と10℃ずつ下げた場合は、-0.4℃ずつ下がり、
    周囲温度を25℃、35℃、45℃ と10℃ずつ上げた場合は、+0.4℃ずつ上がり
    ました。

周囲温度と基準接点補償誤差の影響は

    • 一般的な温度計の取扱説明書には、精度に関する項目として、「測定精度」「基準接点補償誤差(精度)」「周囲温度の影響」の3つがあり、使用現場での温度計の総合誤差は、各精度の足し算になります。
      「総合誤差」=「測定精度」+「基準接点補償誤差」+「周囲温度の影響」
    • 今回の実験に使用した温度指示計の総合精度を計算すると、
      周囲温度 5℃のときの総合精度:±5.9℃
      周囲温度 15℃のときの総合精度:±3.7℃
      周囲温度 25℃のときの総合精度:±2.7℃
      周囲温度 35℃のときの総合精度:±4.4℃
      周囲温度 45℃のときの総合精度:±6.5℃
    • 実験結果から、周囲温度の変化(高低)によって、測定温度(電圧)が大きく成る程、温度計の測定誤差は大きくなりますが、充分に精度内に収まっている事が分かりました。
    • 温度指示計(熱電対タイプの場合)は、誤差の要因として、ウォーミング時間+周囲温度+基準接点補償誤差の3つが誤差の要因になるという事を理解し、ご使用して下さい。
    • また、熱電式温度計をお客様の社内で校正される場合には、氷点式基準接点補償器を使って校正されると思いますが、その場合、氷点式基準接点補償器の内部温度を0℃に保つことがポイントになります。氷点式基準接点補償器に使用する氷と水の状態に関する注意点は、
      「計測器取扱シリーズNo.5 氷点式基準接点」をご覧下さい。

       ちなみに、JIS Z 8704-1993 では、精度の高い測定方法として、基準接点に氷点式基準接点補償器を用いることが記載されています。

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